まじめなOLの鑑賞レビュー

まじめに色々感想とか書く

ようやく「日出処の天子」を読んだOLの感想

暑くなってまいりましたね。

コロナ禍の今、皆様どうお過ごしでしょうか……

私はふつうにOLをやっていますが、最近は毎日オリラジあっちゃんのYouTube大学を見ています。オススメはギリシャ神話と3宗教の動画です。なんかあれ、「うろジョジョ」を彷彿とさせる感じがするんですけど、知ってたりするのかな。あっちゃんもジョジョ好きですしね。

 

さて、そのあっちゃんのエクストリーム日本史の動画を拝見している際、「聖徳太子」が出てきたときですね。「そういえば、聖徳太子の漫画がなんかあった気がする…」と思い出したんですよね。動画内では実在したのかわからない謎の人物~くらいにしか説明されておらず、なんかすごい聖徳太子が気になってきた……といういきさつで、”日出処の天子 完全版全7巻”をアマゾンでポチったんです。

すごいですよこの完全版。全巻表紙めくったところにカラーのポスターがついてるし、掲載当時の表紙もカラーで入ってるんですよ。超美しいです。少女漫画家の作画ではこの山岸凉子先生と惣領冬美先生が好きです……

ただ、でかくて厚いので少し読みづらいですけどね。 

なんでもともとこの漫画を知っていたのかというと、著者の山岸凉子先生の「テレプシコーラ」を学生の時に読んでいたからなんです。この漫画は、「バレエの話か……優雅だな」みたいなノリで読むと心をえぐられるので大変おすすめです。

以下、「日出処の天子」の感想です。

美しすぎる聖徳太子

あらすじもそこそこにとにかく主張したいんですけど、この聖徳太子がとにかく美しいんですよ。こんな聖徳太子見たことないもん。私の中で聖徳太子といったら昔のお札の肖像画とか、ギャグマンガ日和の太子とかのイメージしかなかったです。しかしこの山岸凉子先生の描く聖徳太子は絶世の美少年なんですよね。花も恥じらうような……

さきほどから聖徳太子聖徳太子言ってますが、作中では厩戸皇子と呼ばれていますので、ここからは厩戸皇子または皇子で統一します。

物語は、厩戸皇子蘇我毛人の出会いから、皇子が実権を手に入れるまでの話が描かれています。なのですが、正直このころの日本史を少し勉強しなおさないと、内容がわからない部分もあるかなという感じでした。私は上記のあっちゃんの動画でエクストリーム理解しているのでなんとなーくわかりましたけど……蘇我氏物部氏がどうとか、仏教と神道がどうとか、そのへんがわかっているかいないかで理解度がかなり違うかなと思います。

作品の特徴としては、毛人の気をひきたい皇子が色々画策するけどことごとくダメで、権力は手にするけど愛は得られませんでしたっていう流れの心理描写を楽しむものなので、歴史的背景はそこまで気にしなくてもいいのかな?勉強しなおしてから読むとまた別の楽しみ方ができるって感じですかね。

さて、この厩戸皇子には、なんと超能力(もしくは千里眼?)が備わっています。毛人が初めて皇子(とわかっていて)に会った時も、机上の巻物を手を使わずに動かしているところを目撃してしまったんですよね。それで、皇子がサッと憤怒の表情で毛人を振り返るんですけど、少しずつ表情が戻っていくんです。そして「見ましたね」とニッコリ笑うんですけど、その顔が作中で一番怖いので必見です。

皇子は今までも能力を使っているところを見られたことがあるらしく、「忘れなさい」と脳内に直接語りかけるんですけど、毛人はケロリとして、まったく記憶を無くしている素振りがないんです。どうやらこいつには効果がないらしい……というところで、毛人に興味が沸いていくのですね。自分の能力が効かなかったのは、母親の穴穂部間人媛以外にいなかったからです。

そうして毛人を気に入り、共に過ごしていく中で、どんどん特別な存在になっていくんですよね。

 

毛人にイライラ

私だけでしょうか?なんかもう、始終毛人にイライラしっぱなしだったんですけれども。なんでだろう? 布都姫のこと好きすぎるから?その布都姫がフツーすぎるから?髪型がサザエさんみたいだから?それが根底にあるからとは思うんですけど……たぶん、あの厩戸皇子があんなことまでして二人の仲を引き裂こうとしているんだから、もうお前皇子のそばにいてやれよ!って思ってしまうんですかね?

ほんとに、そこまでして?ってなことをして、毛人と布都姫を引き離そうとするんですよ。皇子は、布都姫を天皇の妃にさせるために、貧しい商人(?)のふりをして王宮の台所に潜り込むんです。ボロキレを身に着けて、顔に土をつけてね……そこまでする!?っていう。ふだんはヒラヒラした服を着て髪にはお花を挿してるんですよ!

なぜ台所に?というと、「物部氏に布都姫という美しい姫がいるらしい」という噂をたてたかったんですよね。いや、直接天皇に教えてやればいいじゃんと思うかもしれませんが、それだと色々カドがたつんですよね。布都姫が妃になったところで皇子にメリットはないはずだし、いきなり布都姫の名前出したら不自然ですからね。

たぶん、皇子は毛人に妻ができたりっていうことにはそこまで感情は動かなかったと思います。毛人の気持ちが一人の女に集中することが何よりも許せなかったんですよね。実際、毛人と刀自古の間にできた子供には愛情を注ぐんです。(あの偽りの逢瀬のシーンで、皇子が刀自古を殺さずに逃がしたとき、「あ、これ子供できてるやつ!」とめっちゃ思いました)

そして、毛人が愛情を持って成した子、蘇我入鹿についてはむっちゃ憎んでいたというので、もうこの人ずっと毛人のこと好きだったんですね……布都姫は入鹿を生んでまもなく死んでしまうのですが、彼女への恨みは一生消えなかったんですね~怖いです。ていうか、皇子の分身のような馬屋古女王も入鹿を嫌っていたので、皇子は亡くなっても恨みは残っていたということかもしれないですが……偉人の恨みっていうのは恐ろしいものですからね。

皇子に死ぬほど嫌われていた布都姫ですが、皇子のみならず読者にも嫌われていたようで、読んだ感想のブログや口コミを見ると必ずと言っていいほど「布都姫が嫌いです」「掲載当時から布都姫が嫌いすぎました」とか書いてあるんですよね。どうやら山岸先生も布都姫をあまりにもつまらないキャラにしてしまった自覚はあったようで、当時恋愛をするという感じじゃなかったので、あまり魅力のないキャラクターになってしまったとのことです。(その反動であんな髪型になったのだろうか……)

 

厩戸皇子の求めていたものとは

 皇子は女が嫌いです。なんで嫌いなのかといえば、母親からの愛情が得られなかったからだと思うのですが。特に、女が泣いたり男の性欲を受け入れたりするのを目の当たりにすると、嫌悪感が膨れ上がってしまうみたいです。

皇子が一番求めていたものは母親からの愛だったんですよね。「母親」と「女」は存在として表裏一体のものですよね。女性しか子供は生めないわけですから。自分が求めている母性が女のものであることそのものが皇子にとってストレスだったんじゃないかと思うんです。自分が本当に求めるものって自分で選べなかったりしますしね……

皇子は実家でも一人孤立していましたが、これって母親の穴穂部間人媛が図らずも?そうしてしまったんじゃないでしょうか。あの子は普通じゃないから、恐ろしいからと、自分から遠ざけるにつれ周りの人にもそれって感染しますよね。

一番愛してほしい母親にそういう状況に追い込まれたという事実がまた、皇子の孤独を加速させたんじゃないでしょうか。もう、皇子と母親の関係を考えれば考えるほど、じゃあ毛人お前が受け入れるしかないだろ!って言いたくなります。

 つまり、自分が嫌いな女っていうのは本質的にネチネチしてて、性に奔放で、でもそれを自分が一番求めているのがムカつく!って感じですかね。屈折してますよね。

そんな皇子ですけど、容姿端麗、頭脳明晰、不思議な力も持っていて文字通りの超人ですので周りからも一目置かれているんですけど、毛人のことになると本当にいじらしくて健気なんですから、応援したくなってしまいます。比例して、毛人へのイライラと布都姫ディスはつのっていくというそういう漫画かなって思います。

 

おわりに

ここまで読んでくださった方はいらっしゃるでしょうか。パーッと書いたので、間違っているところもあるかもしれません。

読む前と読んだあとのギャップがあったとすれば、聖徳太子が思ったよりかわいく描かれていたということですかね。めっちゃ頭が良くてしかも超能力が使えるキャラクターだというのだけ知っていたので、あんなに人間らしく描かれているとは思いませんでした。

そして、この漫画は1980年に連載が始まったというのですから驚きですね。40年前ですか……。そもそも「昔」を舞台にしているのもありますが、古臭さが感じられないです。

余談なんですけれども、バナナフィッシュのユエルンって、これ、めっちゃ似てませんか…??厩戸皇子にめっちゃ似てませんか…!?見た目もそうですし、もともと地位はあったけれども、能力が高くて実力でのし上がって権力を得るとか、愛を求めていたのに作中では得られなかったとか、似てるーっ!と、一人で盛り上がっていました。ていうかブログに書こうと思ったのもこれを主張したかったのが大きいです。それが言いたかっただけ、という。

バナナフィッシュはアマプラで公開されているんですけど、きっとこのコロナ禍でたくさんの人が見たんじゃないかなと思うんですよねー。この作品も、今映像化したらけっこう流行るのでは?なんて思うんですけど。歴史ものは今まさに流行ですし、しかも超美貌の聖徳太子なんて、話題になりそうですよね。ノイタミナでやってほしいです、よろしくお願いします。

コメントくださった方ありがとうございます!